(公開日:2020.10.28)(更新日:2024.9.26)
僕は現在36歳で現役の介護福祉士(14年目)、妻も現役介護福祉士、2児のパパです。
今回は【言葉ひとつで大きく変わる! 声かけのテクニックとタブー】に関する内容です。
この記事ではこんな疑問を解決します。
声かけが苦手…どんな声かけがいいの?
声かけで利用者さんの反応はそんなに変わるの?
認知症のある、利用者さんへの声かけで「笑顔になってくれた、嬉しい!」と思っていても、他の利用者さんを笑顔にすることが出来なかった、なんてことたくさんありますよね…
そしてスタッフの中には、「あの利用者、話通じない」とすぐに諦めて、利用者さんを悪者にしようとする人もいたり…
否!!!!
利用者さんは悪くありません。介護士なら色々なパターンの引き出しを用意し、歩みを止めずにいろいろ試すべきです。その心を忘れてはいけません。
そこで今回は、現場でリアルに使える声かけのテクニック、タブーを紹介していきたいと思います。
ぜひご覧下さい(^^♪
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言葉ひとつで大きく変わる! 声かけのテクニック
今回の声かけのテクニックは、日頃から利用者さんと信頼関係を築けていることを前提にお話していきます。
僕自身、14年介護をしてきて声かけがいかに重要であるか身に染みています。
本当に言葉ひとつで大きく利用者さんの表情・反応・行動が変わってくると実感しています。また、自分への信頼もそれで決まると言っても過言ではないと思っています。信頼されるようになれば、しっかりこちらのお話を受け止めてくれるようになります。
今回は、介護施設で働いていて特に多い、入浴拒否の方に向けた声かけを例に紹介していきたいと思います。
※もちろん入浴拒否だけに限らず、他の声かけにも応用できます!
皆さんは、利用者さんが介護拒否された場合このような対応をしていますよね(^^♪
- 時間をおいてもう一度声をかける
時間を置くことで気持ちが変わることが多い。 - スタッフを変えて声をかける
男性から女性・女性から男性スタッフに変えて声をかける。また、その利用者さんのお気に入りのスタッフが声をかけることで安心して入ってくれることが多い。 - 入浴前に事前に一緒に行きましょうねと声をかけておく
事前に利用者さんに声をかけし、約束しておくことで心の準備ができるため入ってくれる。
そして、拒否にも種類がありますよね!
- 一緒に行ってもらうのが申し訳ない場合
- 行くのがめんどくさい場合
- 今行きたくない場合
- 認知症の症状でイヤになっている場合
などがあると思います。
それに合わせた声かけや本人の性格に合った声かけを実践することが理想です。
それでは9つ紹介していきます。
【入浴拒否の利用者さんに対しての声かけ①~⑨】
①「あなたのためにやりたいんです」と誠意と迷惑でないことを伝える。
②「今なら空いている・混まない・スムーズ」と利用者さんのメリットを提示する。
③お風呂に行くまでが面倒なため、「近くを通ったから、せっかくなら寄って行くか」と思ってくれる。
④後回しにすると、さらに億劫に感じてしまうことを伝えよう。
⑤「今のタイミングで行かないと、遅くなるかもしれない」と正直に伝える。
⑥「1番風呂・キレイなお湯」と言って利用者さんのメリットを提示。また、「最初に声をかけてもらえた」と優遇してもらって嬉しい。
⑦「着替えをしましょう」とお風呂場までご案内し脱衣介助、「せっかく、新しいお洋服に袖を通すので軽く汗でも流してさっぱりしていきませんか?」➪「ついでに頭も洗っちゃいましょうか?」➪「せっかくなので湯船も入って温まっていきましょう?」と段階を踏んで声かけする。
直接お風呂に行きますと伝えないで、小さいイエスを積み重ねていきましょう!
⑧お風呂に入ったあとにいいことが待ってると想像させる
⑨「妻が来るならキレイにしとくか」、と身近な人を会話に出してみる。
良心に語りかけて「それならしょうがないな」と思ってもらう。結構つかえます(笑)
他の利用者さんをだしに使う(笑)スタッフを使うのもありです!
声かけのタブーは?
- 指示(○○して下さい)
- 禁止(○○してはダメ)
- 強要・詰問(どうして○○したの)
- 命令口調(○○しなさい)
まずこれらはすべて声かけにおいてタブーですので気を付けて下さい。こちらが利用者さんにしてほしいことは、「~してもらえますか?」と、「依頼」というかたちで伝えるようにしましょう!
その他、声かけの際のタブーを具体的に5つ紹介していきたいと思います。
①元気のない声かけ
元気のない声かけをして、相手をマイナスの感情にしていませんか?
僕自身、利用者に声をかける時、自分の第一声にすごく気を付けています。自分の第一声に元気があれば、相手はプラスの感情になり、その後もそのプラスの感情が続きます 。
これで暴力や暴言が出現しづらくなります。
「元気な人に声をかけられると元気になる」 実際、自分もそうですよね!!
不穏になりやすい利用者さんに対しては特に第一声を意識してみて下さい、利用者さんたちの反応が全然違うことが実感できますよ♪
②スピーチロック(言葉の拘束)
言葉によって相手の行動を押さえつける「スピーチロック(言葉の拘束)」です。1度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
スピーチロックは、自身でも気付かないうちにしまっている可能性があるので注意が必要です。では相手の行動に対して、どのような拘束をしない言葉に言い換えれば良いか、例を挙げてみます。
ちょっと待ってて! | ~しているので、あと〇〇分待っててもらえますか? |
座ってて! | ~すると危ないので、座っていてもらえますか? |
ダメ!なんでそんなことするの? | 一人で○○すると危ないので、一緒にやりましょうね♪ |
※こちらはあくまで一例ですので、応用したり、別の言い換えも試してみて下さいね♪
「ダメ!」と、こちらから強い言葉を投げかけるのはタブーです。柔らかい口調・言葉で、丁寧に気持ちを伝えるように心がけて下さい!
また、「ちょっと」・「少し」という曖昧な表現では、利用者さんを不安にさせてしまいます。「あと○○分」や「短い針が3のところまできたら」など、具体的な目安を提示してあげることで「放ったらかしにされている」という気持ちにならなくなります。具体的に丁寧に伝えるようにしましょう。
丁寧な言いかたをしても、こちらの要望だけを相手に伝えてしまうとスピーチロックになってしまうことも…。利用者さんに声をかけられたら、話の腰を折らずにきちんと要望を聞き、一度頭で整理してからこちらの気持ちや要望を伝えましょう!
③認知症の方を否定する声かけ
認知症の利用者さんに声かけをする際、スタッフが否定し説得してもうまくはいきません。
たとえば、
- 「ご飯を食べてない」と言う人に➪「さっき食べたばかりでしょう!」
- 「仕事に行く」と言う人に➪「仕事はとっくに辞めてるでしょう!」
- 「家に帰る」と言う人に➪「○○さんの家はここですよ!」
- 「物を盗られた」と言う人に➪「盗ってません、そんなもの最初からないですよ!」
などがそれに当たります。
相手の行動を力づくで変えさせようとすると、相手も感情的になったり、暴力で訴えたりと危険です。
そんな時は相手に合わせ、寄り添った声かけをしましょう!
✖:「さっき食べたばかりでしょう!」
〇:今ご飯を作っていますから、もう少しお待ち下さい♪その間にお茶でものんでいて下さいね
✖:「仕事はとっくに辞めてるでしょう!」
〇:今日は日曜日ですよ、○○さんは働き者ですね♪休みの日くらいゆっくりして下さいね
などと、いったん相手の話を受け入れるようにしましょう!
また、「家に帰る」という場合は、何かしら理由があるものです。「子供が帰ってくるから、ご飯の支度をしなくちゃ」と言うなら、
〇:さっき連絡が入って、今日はご飯はいらないそうですよ。もう少しゆっくりして下さいね♪
「物を盗られた」と言う場合は、
〇:あれならさっき、クリーニングに出したところです。勝手なことをしてごめんなさい
など、否定ではなく、相手に合わせていろいろと工夫してみるといいですね(^^♪
④自尊心を傷つける声かけ
ここでは、排泄ケアを例に「自尊心を傷つける声かけ」を説明させていただきます。まず、排泄ケアの際に必ず知っておいてほしいポイントがあります。
それは「排泄を見られる人の気持ち」です。
自分が排泄をしている姿を他人に見られているとイメージしてみて下さい。すごく恥ずかしくて嫌な気持ちになりませんか?その嫌な気持ちは利用者さんも同じように感じています。介護スタッフ、介護をするという目的のもとで必要であるといえど、そういった気持ちへの負担を望まずとも背負わせてしまっています。
ただでさえ気持ちへの負担を感じている利用者さんに対し、「くさい」「汚い」などの否定的な言葉もタブーであるとしっかり頭に入れておいて下さい。悪気がなかったとしても、「うわー汚い!きれいにしましょうね~」などと言われたら、だれでも傷つきますね。相手の心情に配慮しながら、ササッと終わらせるのがプロというものです。
スタッフから排泄の声をかける際には、周りの人にわからないようにそっと耳打ちしたり、人のいない離れた場所で誘うなどの配慮が大切です。
⑤赤ちゃん言葉
現場でこんな声かけをしているスタッフはいませんか?
- 「あーんして」
- 「おいしいでちゅか?」
- 「しっかりごっくんできて偉いね」
- 「○○ちゃんカワイイ」
現場で使われがちですが、「あーんして」などの幼児語、上から目線の「○○してあげる」はタブーな声かけです。それに加えて、「ちゃん付け」や「あだ名呼び」が黙認されている現場もあると思います。
「親しみを込めて」という思いから、利用者さんを「ちゃん付け」で呼ぶことが多いと思います。しかし、それがいつの間にか「馴れ馴れしく」なってしまっていることや、無意識のうちに上から目線になってしまっていることもあります。
また、緊張感がなくなり「これくらいなら、いいか」と仕事がいい加減になってしまうことや、利用者さんに対して誠意を込めた対応ができなくなることもあるので注意が必要です!
利用者さんとの関係性にもよりますが、利用者さんは『○○さん』と呼ぶことが基本です。きちんと一人の大人として接し、キレイな言葉で丁寧に話すことを心がけて下さい!
利用者さんは、「お世話になっている立場だから…」と、イヤだったとしても言えない方もいます。赤ちゃん言葉や、むやみな「ちゃん付け」「あだ名呼び」は、利用者さん・ご家族・上司からの信頼を失うことにも繋がってしまいます。
さいごに……
上から目線で接してくる人、自分の都合を押し付けてくる人や、馴れ馴れしい人などなど。そんな人と関わるのは、誰でも嫌ですよね。逆に、同じ目線に立って話を聞いてくれる人や、礼儀正しい人なら、「この人とはうまくやっていけそう」と思うのではないでしょうか。利用者さんにとっても、それはまったく同じです。
声かけのテクニックは大事ですが、普段から声かけは礼節をわきまえ、相手の意思を尊重することを念頭に置いて下さい。認知症の方への声かけは、相手に合わせ、寄り添うことを忘れないようにしましょう!
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