(公開日:2020.10.28)(更新日:2024.9.26)
僕は現在36歳で現役の介護福祉士(14年目)、妻も現役介護福祉士、2児のパパです。
近年、介護現場では『接遇』が重視されています。
『接遇』とは、利用者さんにおもてなしの心構えを持って接し、心地よい時間と空間を提供することです。また、接遇の基本として「みだしなみ」「あいさつ」「表情」「言葉遣い」「聴く姿勢」の5つが大切だと言われています。
僕の施設でも『接遇』の勉強会や研修を定期的に行っています。僕自身が主催することもあります。
ただ接遇というと、「利用者さんの日々の生活に、何か特別感を与えないといけないのかな?」
と思ってしまうかもしれませんが、そういう訳ではありません。施設は、利用者さんにとって生活の場です。毎日を心地よく過ごせるような安心感を持っていただくことが大切なのです。そのため、介護職には心配りと的確な支援、サービスが求められます。
そこで今回は【『接遇』を制する者は介護を制す!3つのポイントとは?】についてお話したいと思います。
接遇が大事なのは分かっているけど、いつの間にか利用者さんとの日常は当たり前のものになり、おもてなしの精神が薄れてしまっていませんか?
今一度、『接遇』について学んでみましょう!
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接遇を制する者は介護を制す!3つのポイント
接遇を行う際に意識してほしい3つのポイントがあります。それは、『声かけ』『傾聴』『印象』です。詳しくみていきましょう。
①声かけ
利用者さんは家族と離れて生活しているため、不安感・孤独感を抱えている方が多いです。介護スタッフからの声かけは安心感・元気に繋がります。それくらいスタッフの言葉は、利用者さんにとって影響力が大きいのです。
いかに利用者さんに寄り添った対応・声かけが必要であるか分かりますね。あなたの声かけ次第で、安心した生活を送れる方もいるのです。そこで声かけの際にはこの5つに注力してください。
- 明るい声かけ(第一声が特に大事)
- 言葉の拘束(スピーチロック)をしない
- 肯定する声かけを意識しよう
- 自尊心を傷つけない
- 赤ちゃん言葉を使わない(基本は敬語)
どれも慣れてくると意識が薄れてしまうため、定期的に自分の声かけ・ふるまいを確認・見直すように心がけて下さい。
②傾聴
【傾聴の際の注意点】
- 相手の目をしっかり見ること
- 適度にあいづちをうつこと
- 言葉をくり返して(オウム返し)内容を確認すること
- 話の内容を要約すること
傾聴は訓練が必要ですが、最終的には『相手の声にならない声』を聴くことを目標にして下さい。
『相手の声にならない声』とは、相手の心を察してあげる・寄り添うことですね。マンガの吹き出しのように「相手は今こう言いたいんじゃないか?」「こう思っているんじゃないか?」ということを察し、寄り添うことです。
利用者さんの中にはやってもらうことに申し訳なさを感じ、自分から言えない人もいます。こちらが気付いてあげることが大事です。それは利用者さんとの日々の関わりで少しずつ出来るようになります。「相手を知ること」「理解すること」に努めましょう!
③印象
『接遇』を行う上で、利用者さん・ご家族からの印象はとても大事です。
人は見た目が9割という言葉があるのを知っていますか?相手の印象のほとんどが見た目で決まってしまうと言われています。ということは身だしなみがどれだけ大事が分かりますよね?
メラビアンの法則ではこのように言っています⇩
【メラビアンの法則】
メラビアンの法則では相手に与える印象は、この割合で決まると言われています。
「視覚情報が55%」 「聴覚情報が38%」 「言語情報が7%」
具体的に説明しますと、
視覚情報は、見た目・表情・服装・髪型・清潔感・身振り・手振りです。これだけで55%の自分の第一印象が決まってしまいます。
聴覚情報は、声の大きさ・声のトーン・声の質・話す口調・言葉づかい・話す速さです。(38%)
言語情報は、話の内容・言葉の意味と言われています。(7%)
一度悪い印象を与えてしまうと悪いイメージを払拭するのは難しいので十分に注意して下さい。自身の身だしなみや対応を一度見直してみてください。
なぜ接遇が求められるのか?
- 利用者さんに日常生活を心地よく、安心して過ごしていただくため
- 個人を重視した質の高いケアが求められているから
なぜ接遇が求められるのか、この2点を具体的に説明していきます。
①利用者さんに安心して過ごしていただくため
冒頭でもお話した通り、介護職には心配りと的確な支援、サービスが求められています。
そのためには、利用者さん一人ひとりに合わせた対応はもちろん、同じ利用者さんのケアであっても、その日の体調や状況に合わせたケアをすることが大切です。
利用者さんとの距離が近い介護職だからこそ、信頼関係を築くことが満足度に繋がります。「自分はしっかりやっている!」と思っていても、利用者さんからの目線で見ると対応が不十分だったり、望まれていないサービスを提供してしまっていることもあります。
そうなってしまうと、利用者さん・ご家族の心証が悪くなり、スタッフの対応を受け入れてもらえなくなります。また、利用者さんの介護拒否に繋がることも…
そうならないためにも利用者さんにしっかりと寄り添い、「本当にやるべきことなのか」「本人が望んでいるのか」を考え、利用者さんの理解を得ながら対応するのも大切なスキルです。このスキルがあれば利用者さんとの信頼関係を築け、スタッフの充実感にもなります。さらに仕事を円滑に行うことができるようにもなります。
まずは利用者さんを知ることから始めよう!おのずとニーズが見えてくる♪
②個人を重視した質の高いケアが求められている
今までの介護施設は数十人の高齢者が「決まった時間に食事を取る」など、時間割に沿った生活を送る「集団ケア(従来型)」が主流でした。しかし、近年では個人の尊厳を重視し、利用者さんの生活スタイルに合わせた「個別ケア(ユニット型)」を行う施設が増えてきました。
個人に合わせたより良いケアを提供するためには、「おもてなしの心」が重要になります。そのためには「接遇」について学び、介護現場でも取り入れる必要があるのです。
さいごに……
今回は、利用者さんが安心して心地良く過ごして頂くために大切な【接遇】についてお話してきました。介護職と利用者さんは、とても距離の近い関係です。もしかしたらご家族以上に、その近い距離感で長い時間を共に過ごすことになるかもしれません。
長く共に過ごすことで、お互いの存在に慣れ、認め合い、信頼関係を築いていくことになりますが、気を付けてほしいことは介護者の意識です。先述しているように、慣れていくうちに介護者側のおもてなしの精神が薄れていきがちです。それは僕自身も体感として感じてきたことでもあります。だからこそ、一年の中で定期的に接遇について学び直し、考えを巡らせ、普段の自分の振舞いを見つめ直すことがとても重要です。
介護現場でいう接遇とは特別な何かをたまに提供するのではなく、日々の細やかな心配りや、丁寧な声かけ、利用者さん一人ひとりが「一人の人間として大切に想われている」と安心して暮らすことのできる環境を絶えず提供し続ける事ではないでしょうか?
この記事が、あなたの最近の利用者さんへの対応を振り返るキッカケになってくれたら幸いです。
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